#57 レコードのノイズ除去・ソフトウェア編

rec_00_WS068b.jpg

レコード再生ノイズを今どきのフリーソフトでお掃除してみた、の巻。

レコード再生に含まれる代表的なノイズ2種というのが、
・クラックルノイズ
 不連続で不定期。レコードの溝に付着する異物により「ブツ、、、ブツ、、」という音。
・スクラッチノイズ
 連続的。レコードの溝に付着する微細な多くのチリや汚れにより「ジジーー」「ザーー」などのこすれる感じの音。

分かりやすくハッキリ分けてしまったが実際は両者の中間もあって、スクラッチノイズの中にも集団のクラックルノイズが含まれている場合もあるし、不連続なスクラッチノイズだってある。 レコードの物理的な由来ではないノイズは除外ね。

我々アナログオーディオ世代。 色んなクリーナーに頼ってレコードを拭き拭きしてきましたなぁ。 兎にも角にも物理的なレコード・クリーニングに頼ってきた。 それが、世の中の製品ほとんどがデジタルオーディオのテクノロジーへほぼ移行しちゃった今の時代、大して高価でもないPCオーディオ環境で昔のレコード音源を、
 ・高品質なデジタル録音が可能
 ・フリーソフトで波形(音)をいじってノイズを減衰できる。(作業時間はかなり要するけれど)
アナログ情報をデジタルの環境へ移す事で、元の音を再現出来る可能性が広がった。

そんな事で、ラジオを聴いていたら分かりやすい素材が舞い込んできたのでやってみた。
おまけとして、レコードの録音環境や物理的なクリーンングについて最後にちょっとだけ。


◆きっかけは「終戦の玉音放送」

記事のきっかけはコレ。

終戦の玉音放送
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/taisenkankei/syusen/syusen.html
当庁が管理する先の大戦関係の資料について
http://www.kunaicho.go.jp/kunaicho/koho/taisenkankei/index.html

2015年8月1日の事、あるラジオ番組から「玉音放送用の録音原盤」の音声が流れたのだけれど、おやおや!すごく自然な昭和天皇の声だぞ! 戦後70年の節目の年に当たり、宮内庁が2014年12月に「玉音放送用の録音原盤」の復元に成功し、デジタルリマスター録音した音声を今になってようやく公開したのである。 えらく時間がかかりましたな(笑)
昭和天皇が読み上げた、正しくは「終戦の詔書」と言われる文書。 過去幾度と無く聴いたその音声は、戦後コピーが繰り返されたものらしく(しかもピッチを誤って若干遅い(低い音))、それはそれで古いラジオから聴いている感覚で味のある音ではあった。 それが、今年(2015年)8月1日公開の明瞭感を増した音声だとノイズまで鮮明でとても気になる。 レコード特有のクラックルノイズとスクラッチノイズはただ邪魔なだけなのだ。 宮内庁は「玉音放送用の録音原盤」を、まずはありのまま、無事再生される事を優先したのでしょうか?
ならば、今どきのフリーソフトでどれだけノイズを除去できるか試してみましょうかね。

結論言っちゃうと、
元の音声(ある部分9秒抽出)が、
     ↓
ソフトウェアのノイズ除去処理によって
     ↓
この様な音声になった。

それだけじゃ物足りないので、後半は所有のレコードから音楽素材のノイズ除去も例にあげた。



◆フリーソフトでノイズ除去 その1「人の声」

使用するフリーソフトは「Audacity」
http://www.forest.impress.co.jp/library/software/audacity/

「玉音放送用の録音原盤」より、お馴染みの部分を切り取った約9秒を利用する。
音声Aとする

音声Aを開き、[ctrl]+マウスホイール上で波形を拡大するとこんな感じ。
(移動は[shift]+マウスホイール)
rec_10_syousyo_WS019a.jpg



再生中、波形のどの場所かポインター(と言うのか?)が追従してくれるので、音と波形を比較できるところがミソ!


クラックルノイズ「ブツ、、ブツ、、」と、スクラッチノイズ「ジ---」は波形のどの部分か、この様な特徴がある。
rec_11_syousyo_WS028a.jpg


それぞれに適した除去機能を使う必要があるが、自分は大体こう処理する。
「ブツ、、、ブツ、、」のクラックルノイズ
 手動で時間をかけてノイズを見つけ、直接消していく。(とんでもなく時間がかかる)
 音声は保ったまま100%除去可能。
「ジ---」のスクラッチノイズ
 全体をソフトウェアにお任せして減らす。
 効果を上げて除去するほど音声が崩れるのでバランスを考慮。


第一段階は、クラックルノイズの除去
再生しながらクラックルノイズのある場所付近で停止ボタン。
時間軸を拡大するとこんな感じで違和感のある波形が見つかる。
その範囲を適当にマウスでドラッグし、メニュー「エフェクト」-「修復」で消す。
rec_12_syousyo_WS029a.jpg
([ctrl]+マウスホイール上で拡大。移動は[shift]+マウスホイール。)


この通り違和感のある波形は消え、ひと通り時間をかけて処理。
目立っていた「ブツ、、ブツ、、」の音が消えた事が分かる。
音声A(元の音)
音声B(クラックルノイズ除去)←コレ!
rec_13_syousyo_WS030a.jpg
(たった9秒でも30分以上はかけた)


第二段階は、連続的な「ジ---」のスクラッチノイズの減衰

手順は、まずメニュー「エフェクト」-「修復」で分析させ、その次にノイズを減衰させる。
始めに、
ノイズだけの時間を範囲指定(昭和天皇の声を含まない)・・・本来は数秒必要らしいが今回は1秒未満で試した
     ↓
「修復」画面の「ノイズプロファイルの取得」ボタンを押す
こうしてノイズ成分を分析させる。
rec_14_syousyo_WS048a.jpg


「修復」画面は一旦消える。
→ 再度メニュー「エフェクト」-「修復」を呼び出す。


「プレビュー」ボタンでノイズ除去の効果を聴きながら、「Noise reduction」「Sensitivity」の数値を調整する。
数値は右側が効果大。だが効果を上げると元々の音声が崩れるので納得いくバランスを検討しよう。
最後にOKボタンで「修復」処理される。
rec_15_syousyo_WS049a.jpg


修復の結果、波形の中心を通る付近にあったノイズレベルが減っている事が分かる。
音声A(元の音)
音声B(クラックルノイズ除去)
音声C(クラックルノイズ&スクラッチノイズ除去) ←コレ!
rec_16_syousyo_WS050a.jpg


どうだろう?
元の音(昭和天皇の声)があまり損なわれずに極力ノイズ2種を減らした結果である。
若干高音域のレベルが下がっているので、第三段階として、若干減衰した高音域の音をイコライザーで上げてみるのも1つの手段だと思う。 これはお好みで。



◆フリーソフトでノイズ除去 その2「音楽」

次の素材は音楽。

音楽となると「ジ---」のスクラッチノイズ除去は出来ない
いや、やっても良いが、自動でノイズを判別&減衰によって必ず元の音まで編集されて変質してしまう。 ノイズと音楽の区別は100%ではないのだ。

なので、音楽に関しては
「ブツ、、、ブツ、、」のクラックルノイズに限り手動で消していく

結果として、
曲ファイルA(ある曲より5秒間)が、
(3秒直前のクラックルノイズ)
     ↓
ソフトウェアのクラックルノイズ除去処理によって
     ↓
曲ファイルB(クラックルノイズ除去)になった!




使用する録音素材
丁度いい具合にノイズを含むレコードの録音ファイルが無かったがコレを使う。
(物理的にこれでもか!とクリーニングしている(笑))
曲ファイルA・・・ある曲から約5秒抽出
これにはクラックルノイズが1箇所ある。
→ 3秒ちょっと前

聴きながらそれぞれの箇所をおおよそ特定し波形を拡大する。
(波形拡大は[ctrl]+マウスホイール上、移動は[shift]+マウスホイール)
rec_24_cos_WS020a.jpg


違和感のあるノイズを見つける。
rec_25_cos_WS021a.jpg


更に拡大するとクラックルノイズが3箇所ある事に気が付く。
その範囲を適当にマウスでドラッグし、メニュー「エフェクト」-「修復」でまとめて消す。
rec_26_cos_WS024a.jpg


クラックルノイズは綺麗に除去された。
曲ファイルA(録音そのまま)
曲ファイルB(クラックルノイズ除去)←コレ!
rec_27_cos_WS025a.jpg


こんな作業を1曲に対して数時間もかけて処理するのである(笑)
忍耐に加え経験と勘も必要である。
自分のレコード盤だから出来るけれど、他人様のなんて目の前に札束を積まれても絶対にやりませんね(笑)
ええ、絶対に断ります。
断る!!ヽ(*`3´)ノ

(この音楽素材はレコードを綺麗にクリーニングし過ぎた悪い例なので、もっとノイズがあるモノが用意できれば差し替えようかな)




◆感想など

こんな具合に、音源の種類(声、音楽など)やノイズの質に合わせてソフトウェアの処理が有効な事が分かると思う。 やらない手は無い。 アナログオーディオ世代は溜め息が出てしまいますな(笑)

Audacityを使うのは暫く振り。 自分はWindows XP初期の頃から専らWaveLab(有償)を使っているが、理由はフリーソフトが実用に耐えなかったからである。 画面のパフォーマンスが悪かったり、マウスホイールが使えなかったり、VSTプラグインが使えなかったり。 そんな中ようやく見つけたのがAudacityだった。
改めて最新版を使ってみると使い勝手も基本機能も進化している様だし、今回の用途に限っては十分過ぎる。 VSTプラグイン対応なので数多く出ているフリーのVSTプラグインを導入すれば機能が増やせるのもオイシイ。 ダイナミクス系VST「TLsmaximizer」「w1limiter」はレコードからの録音で音量UPに是非お勧め。 レコードの音はダイナミック・レンジが広くピークが高い部分が邪魔をしてノーマライズでは音量全体を上げられない事が多い理由。 
(TLsmaximizer → ここのHPからここへ移動して入手)
(w1limiter → ここで入手)


◆おまけ 物理的なノイズの除去について

レコードの場合、ある程度盤面を綺麗にして全体の状態を良くしておかないと、ソフトウェア上のノイズ除去がエラく大変になる。 自分の場合、クリーニングはこれらを使う。

バランスウォッシャー33」・・・少量のバランスウォッシャー33エクササイズセットもある。
盤面の汚れがちょっとしつこい場合はこの液体クリーナーが適当。
・33Aをドバドバ盤面に垂らし全体が濡れている状態にする。
 (レコードはターンテーブルに置いて回しながら、2cm幅くらいのビニールの切れ端を当てて液体を伸ばす)
・1分~数分後(お好み)にブラシAT6017(下記参照)で汚れを除去。

これで劇的に音がクリアになる。 仕上げには33Bを同様に使う。(ちょっと荒い説明だけれど)
バランスウォッシャー33の効果は無くプラシーボ、なるコメントを時々見かけるが、経験上劇的に効果があったのは確か。 効果が得られないのは、恐らく液体塗布後に異物を除去するやり方が悪いものと思われる。


オーディオテクニカ AT6017」・・・添付の洗浄液は使わない
方向性のあるベルベットで汚れをこしとる(引っ掛ける)効果が非常に良い。 ハケが添付しているので効果的に除去出来る。(安いAT6012だとハケが無いので効率的にゴミを除去できない)

拭き取りは、バランスウォッシャー愛好家はクリーニングクロスの レイカ VISCO 33(ティッシュみたいな使い捨て)を使うのが定番とされているが、自分はお勧めしない。 どうにも汚れを除去する効果が得られなかったから。 クロスの構造上汚れを引っ掛ける作りにはなっていないのでレコード盤に残ってしまう率が高いのだ。 やはりAT6017が適している。
課題は、レコード盤を何枚も処理したい場合にAT6017の水分を効率的に除去する事。 なるべく毛羽立たない(カスが出ない)もので吸い取る事。 今は残っているレイカ VISCO 33を1枚+内側にキッチンペーパーを重ね吸い取り能力を高めてAT6017に押し当てている。 VISCO 33が無くなったらキムワイプ(カスが出ないティッシュ)にすれば良いかな。


◆おまけ PCへの入力について

現在使用中のオーディオカード

ESI MAYA44e」・・・販売終了。現在はMAYA44XTe に替わっているがそろそろ無くなりそう。
アナログ入出力とも標準プラグが心強い。 S/N比が素晴らしく、再生にしても非常にクリアでコストパフォーマンスの高い製品。 ASIO対応。 1万5千円程度だっただろうか。 アナログ入力を持つオーディオ用途として納得の音質だが、これほどコスパの高いオーディオカードは今では希少である。 以前は、M-Audioの「Audiophile 24/96」「Audiophile 192」とかあったのだが、販売終了してしまった。
とにかく、高品位なアナログLINE入力可能なPCIeカードとなると希少なのが残念。 ああ、ありますね4、5万円とか。 無理です。


参考に、所有のオーディオ

・レコードプレーヤー DENON DP-37F
・プリアンプ ONKYO Integra P-308 (フォノアンプ搭載) ・・・画像・上はカセットデッキYAMAHA KX-493

レコードプレーヤーは30年前の学生時代にアルバイトをして買ったもの。 今でも元気。 
(カートリッジはaudio-technica AT150TI VMカートリッジ)
プリアンプはヤフオクで仕入れた。





で!
そのクリーニングをしたうえで、そのプレーヤーで再生したものを、そのPC環境で録音した結果がコチラ。
サンプル曲(約30秒)(COSMOS「BOURBONSUITE」より”忘れな草”)

ほとんどノイズも無く高品質にPCへ取り込み出来ている理想的な状態。
曲全体がこれならソフトウェアでノイズ除去は不要。 なかなかそうはいかないのだけれど^^;


スポンサーサイト
(この一行は、各記事の最後に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)

コメント

コメントの投稿

非公開コメント


(この一行は、各ページ下部に固定表示するサンプルです。テンプレートを編集して削除もしくは非表示にしてください。)